前回に続き、「久里浜医療センター」の樋口進院長にネット依存の特徴を聞いた。

 ◆質問 脳に及ぼす3つめの影響は?

 樋口院長 脳内には「報酬系」と呼ばれる“気持ちがよくなる脳”がある。しかし、ひんぱんに刺激にさらされているとそれが鈍くなってしまう。たとえばギャンブルで勝って1万円を手に入れたとします。それが何度もあると、今度は1万円では満足しなくなってしまう。つまり“わくわく感”といった喜びに対する感受性が鈍くなっていくのです。

 アルコールも同様で、普段飲まない人が1杯飲んだらいい気持ちだが、依存症のレベルでは1杯飲んだだけではおさまらない。5杯、10杯と飲まないとそうならない。こういう状態を「報酬欠乏状態」と言います。それを補うために、もっとたくさん飲まなければいけなくなる。

 ◆質問 もうひとつの影響とは?

 樋口院長 ゲームやギャンブルの場合、勝ち負けのときの反応をみると、同じ数でも「勝ち」に対するほうが強い。たとえば、10回勝った場合と10回負けた場合、「勝った」ことの方を「負けた」ことより、よほど強く覚えている。脳が「勝ち」に強く反応することは、「負け」に対する反省があまりないということになります。

 以上、脳への4つの影響をまとめると(1)未成年ほど衝動コントロールが悪い、また依存により理性の脳の機能が落ちてくる(2)依存の対象を連想させるものを見ると強い欲望を感じる(3)報酬欠乏状態を補うためにより刺激を求める(4)「勝ち」に強く反応する。

 ◆質問 ほかに心配なことは?

 樋口院長 これらとは別だが、インターネットを長くやっている人の中には、脳の神経細胞が壊れてしまうという研究がある。いわば栄養失調で体が悪くなるような話だが原因はよくわかっていない。夜中ずっと起きていることが悪いのか、食事をちゃんと取らないのか、運動不足か、ブルーライトのせいか。実はまだよくわかっていないのです。