<不整脈(11)>

 不整脈の中でも、拍動のリズムが遅くなる徐脈で、心不全や失神を起こすような重篤な状態になると、ペースメーカーを植え込みます。ペースメーカーは、心臓の拍動が遅くなるとそれを感知して、電気刺激を自動的に出す電気療法なのです。

 世界では年間約100万人が新しくペースメーカーを植え込んでおり、米国では約35万人、日本では約6万人です。現在、日本でペースメーカーを植え込んでいる人の総計は、約60万人といわれています。

 心臓をリズミカルに拍動させ、生命を維持するために使うのがペースメーカーです。本体とリード(基本は2本)で成り立っており、本体のサイズは直径約4~5センチ、厚さ約6ミリ、重さ約20グラム。小型軽量化されており、この本体を利き腕と反対側の鎖骨下の皮下(皮膚と筋肉の間)に植え込みます。リードは鎖骨下静脈を通して右心房、右心室に挿入します。植え込み手術は局所麻酔で行われ、1~2時間程度で終わります。

 このように説明すると、手術は何の問題もなく終わりそうに思えるかもしれませんが、不整脈を専門とする医師は、感染に常に気を配っています。皮膚からリードに細菌が感染したり、リードが最適な位置からずれたりすることなどがあるのです。リード関連の合併症は5年で約8%程度、ペースメーカーを植え込むポケットの合併症は5年間で約11%あることが分かっています。そのことも十分に理解しておくことが重要です。

 また、ペースメーカー植え込み後の課題としては、「なるべく運動をしてください」と言われますが、運動制限もあります。それは、同じ動作を繰り返す運動です。テニス、卓球、ゴルフ、筋トレなどで、同じところにストレスがかかるので、リードの断線に結びつくリスクが高いからです。その他、「電磁波に注意」など注意事項はありますので、健康管理をした上でしっかり認識し、実践する必要があります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)