<胸部大動脈瘤(4)>

 胸部大動脈瘤(りゅう)が発見されたならば、「突然死を免れたことに感謝」して、しっかり治療のできる医療施設を選択して、治療を受けましょう。治療は手術と血管内治療(ステントグラフト内挿術)で対応します。前回は大動脈瘤を切除して、その部分を人工血管に置き換える手術の人工血管置換術を紹介しました。今回は血管内治療を紹介しましょう。

 手術はすべての大動脈瘤に対して適応になりますが、やはり手術なので、患者さんの身体への侵襲は大きく、当然、体力の回復には時間がかかります。それに対して血管内治療は、身体への負担が少ない治療。2007年に保険適用になりました。これはステントグラフト内挿術で、血管内にステントグラフトを留置する治療です。

 ステントグラフト内挿術は、脚の付け根の大腿(だいたい)動脈からカテーテルを入れ、治療を必要とする大動脈瘤の部分にまで挿入します。そして、大動脈瘤部分に留置します。そのステントグラフトは、瘤の長さよりも多少長い物になります。瘤の中に新しい血管ができた形になり、瘤部分には血圧が直接にはかからなくなるので、瘤が破裂するリスクはなくなるのです。

 このステントグラフト内挿術ばかりを行っている医療施設もあります。しかし、それはどうでしょう。手術にも血管内治療にも長所や短所があります。それをきちっと説明を受け、患者さん自身にはどれがベストの治療なのか、そこをしっかり判断する必要があります。判断に困ったときには、セカンドオピニオン(主治医以外の専門医に意見を聞く)をとるべきでしょう。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆ステントグラフト グラフトと呼ばれる人工血管に、ステントと呼ばれるバネ状の金属を取り付けた新型の人工血管。これをカテーテル内に収納して、大動脈瘤の治療に使います。