ワインのボトルを1本空けても平然としている人がいる一方で、コップ半分くらいのビールで真っ赤になる人も…。

 東京大学の研究チームが4000人を対象に調査を行ったところ、顔がすぐ赤くなってしまうようなお酒に弱い人が1日に缶ビール1本以上飲むと、弱くない人に比べて食道がんになる危険性が56倍(!)にもなるそうです。アルコールを体内で分解する時にできる発がん性物質「アセトアルデヒド」が、原因といわれています。お酒が弱い人は「アセトアルデヒド」を分解する能力が弱いため、がんになる危険性が高いというわけです。

 大学の体育会系クラブや会社の営業などで「お酒の修業」を重ねるうちに、「もともとすぐ顔が赤くなるタイプだったけど、最近強くなってきた」という人は、喜んでいてはいけません。それが最も危険なのです。顔が赤くなるということは、体質的にお酒が弱い証拠。分解能力が弱いのでアセトアルデヒドは体内にたまっていきます。実に日本人のおよそ4割の人が、このタイプです。

 日本人の遺伝子を調べてみると、44%の人はアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱いか、欠けており、少量のアルコールでも酔いやすい「酒に弱い体質」です。西欧人では、酒に弱い遺伝子のタイプを持っている人は0%ですから、言い換えると100%の人が、お酒に強い体質ということになります。

 ちなみに、お酒が弱い人がお酒と一緒にたばこを吸うと、食道がんになるリスクは、なんと最大190倍(!!)にもなるそうです。たばこにもアセトアルデヒドが含まれているため、お酒とたばこを併用すると、相乗効果で危険度が飛躍的にアップします。自殺行為に等しいといえるでしょう。「飲んだら吸うな」を肝に銘じてください。

 世界に誇れる居酒屋文化ではありますが、もちろん、酔いにくいからといって、日本人は飲み過ぎるので要注意。「私は酒に強い」という人も注意が必要です。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。