がんになる方は増えており、1981年以降、日本人の死因のトップとなっています。その背景には、悪い生活習慣(たばこ、運動不足)、食生活の変化(欧米的な食生活)、人口の高齢化などが挙げられます。

これら生活習慣の乱れが関係して、がんが発生することもありますが、生活習慣には何ら問題ないのに、偶発的にがんになる方も多いのです。それだけ、がん検診による早期発見、早期治療が重要となっています。

「国立がん研究センター」による調査で、がん検診受診率は高くなりつつありますが、欧米諸国に比べてはまだまだ低い状態です。OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国の乳がん、子宮がん検診の受診率を見てみましょう。15年に発表された、50~69歳の乳がん検診受診率は、米国が80・8%で1位ですが、日本は41%と5割に満たない状況。20~69歳の子宮頸(けい)がんでは、米国が84・5%と群を抜き、日本は42・1%と極めて低いのが実情です。

今後期待されるのが、血液による、がんの早期診断です。血液をとれば、10種類以上の数ミリの早期がんも発見可能と考えられています。これまでのがん検診は、臓器別に行っていたので、時間や費用がかかったり、面倒くさいと感じる人も多いために、検診率が低かったようにも思いますが、血液だけでさまざまな臓器にできるがんを早期診断できるなら、誰でも簡単に受けることになり、検診率も高まることが予想されます。

おそらく将来的には、「血液1滴」で、乳がん、大腸がんなどの早期発見が可能になるのではないか、と考えられます。これは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が国立がん研究センターなどと共同で進めています。がん細胞が分泌する「マイクロRNA」という物質を使って、従来の診断方法では見逃されていたがんを早期発見する仕組みですが、乳がんなら、かなりの精度の高さで診断でき、直径3ミリの乳がんも見つけることができる、といいます。

血液による早期のがんの診断が普及すれば、検診率が高まるだけでなく、がんが強く疑われる人は、誰もが積極的に精密検査を受けるようになります。そうなれば、早期の治療も可能になりますから治癒率も高まります。この血液検査によるがん検診が普及すれば、日本人の死因の1位であるがんが、1位でなくなる日も近くなると思います。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。