薬指より、人さし指の長い男性は、そうでない男性に比べ、前立腺がんの発がんリスクが3分の1以上「低い」という研究結果が、イギリスの研究チームから発表されました。94年から09年にかけて前立腺がんの男性1500人と健康な男性3000人を調査。全対象者のうち、半数以上で人さし指が薬指よりも短かったというのです。

このグループと、人さし指と薬指の長さが同程度のグループ(全体の約19%)では、前立腺がんのリスクは、ほぼ同じでした。

一方、薬指より人さし指のほうが長いグループで、前立腺がんの発症リスクは33%低かったのです。さらに、60歳未満の男性に限ると、このグループが前立腺がんを発症するリスクは、87%低かったといいます。

人さし指と薬指のどちらが長いか、短いかは、生まれる前に子宮の中で胎児が浴びた性ホルモンのレベルを示すといわれ、男性ホルモンのテストステロンを浴びた量が少ないほど、人さし指が長いといわれています。

これまでの研究で、テストステロンは前立腺がんの成長を促すことが示されています。それにしても、指の長ささえもが、がんの指標になるとは、驚くばかりです。

話は変わりますが、生まれてからの生活習慣においても、意外なことでがんになるリスクが高まるものがあります。まず、「歯磨きをしないと、食道がんになる」というもの。愛知県がんセンターの報告によるものです。1日に1度しか歯を磨かない人は、2回以上歯を磨く人より、食道のがんになる危険性が、29%も増加するということです。口やのどには、発がん性物質のアセトアルデヒドを作る細菌がおり、歯を磨かないと細菌が増殖し、がんになる危険が増すというわけです。

「座りすぎ」も、問題です。米カンザス州立大学が26万人を調査。1日に4時間以上座っている人は、それ以下の人に比べて、がん全般の発症率が大幅にアップしたことがわかっています。運動量が少なくなり、体内の血流も悪化します。かかる病気は何も、がんだけではなさそうです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。