本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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頻尿を説明する前に、まず「正常な排尿」とはどういうものか? ということについてお話しします。次のような状態なら正常な排尿といえるでしょう。

(1)特におなかに力を入れなくても排尿できる(2)尿に勢いがある(3)途中で尿が途切れたりしない(4)残尿感がない(5)排尿後すぐにまた行きたくなったりしない(6)自分の意思でコントロールできる

数値で見ると▼1日の尿量=約1000~2000ミリリットル▼1回の排尿量=約200~400ミリリットル▼1回の排尿時間=30秒以内▼1日の排尿回数=昼間5~7回、夜間(就寝から起床まで)0~1回が目安です。

一方、頻尿とはしばしばトイレに行きたくなり、排尿回数が増えるものです。頻尿の定義は、日中8回以上、夜間1回以上です。また、尿失禁は「トイレ以外の場で、しようと思っていないのに尿が出てしまい生活に支障があったり、衛生上問題になるもの」をさします。

この頻尿と尿失禁には、密接な関係があります。頻尿の主な原因は、何らかの原因で膀胱(ぼうこう)が過敏になり、尿意が頻繁に起こることによります。この症状が、尿失禁の原因にもなるのです。どういうことでしょう?

一般的に尿が150~200ミリリットルぐらいたまると、尿意を感じます。しかし、400~500ミリリットルぐらいまではためられ、まだ余裕はあります。300ミリリットルほどたまったら「そろそろ出さないと」とトイレに向かうのがふつうです。

ところが、尿失禁があると、「もらさないように」と早め早めにトイレに行くようになります。少しでも尿意を感じたり、外出先でトイレを見たりすると、「念のため出しておこう」という気持ちになるのです。こうして早め早めの癖がつくと、膀胱はしだいにためる力が弱くなり、少しの尿量でも尿意を感じるようになります。つまり、これが頻尿です。尿失禁に悩むあまり頻尿となることもあり、頻尿と尿失禁は深く関わり合っているといえるのです。