本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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頻尿・尿失禁の検査方法について説明します。最も基本的かつ重要なものに「問診」があります。どのように「生活の質」(QOL=QualityofLife)が損なわれているのか、何にいちばん困っているのかなど、本人がきちんと伝えないと、医師にはわかりにくいところがあります。問診は受付時に記入する問診票に沿って詳しく聞かれます。問診により尿失禁の9割は診断がつき、重症度の振り分けもできます。

必ず行われる基本的な検査の1つが「尿検査」です。採尿時の注意点は「中間尿」をとることです。出始めの尿には、尿道や膣(ちつ)、外陰部などに付着していた不純物が混じるため、「途中のもの」をとることを言います。正しいとり方は(1)出始めの尿はとらずにそのまま流す(2)いったん排尿を止めて採尿カップをあてがい、50ミリリットルぐらいためる(3)すべて出し切らないうちにカップをはずし、残りはトイレに流す

こうしてとった尿によって、潜血は? 腎機能は? 糖尿病は? 尿の濃さは? 尿の酸性度は? などを調べます。また顕微鏡で尿を観察し、白血球や病原菌の有無、がん細胞が含まれていないか、などをチェックします。尿検査をすれば、単純な尿失禁が病気によるものかどうか、おおよその見当がつきます。

また「診察」では、まず腹部の触診を行います。便秘をしていないか、おなかに脂肪がつきすぎていないか調べます。それらが膀胱(ぼうこう)を圧迫して尿失禁を引き起こしている可能性があるからです。下腹部がふくらんでいる場合は膀胱が満杯になっている恐れがあり、溢流(いつりゅう)性尿失禁が疑われます。

次に患者さんに診察台に上がってもらい、指診、内診を行います。外陰部の尿道口や膣口(ちつこう)、会陰部、肛門部などを観察し、骨盤臓器脱がないか、などを調べます。さらに膣に指を入れ、指を締めてもらったり、いきんだりなどの動作をしてもらい骨盤底の動きがよいかを調べます。女性にとってはあまり愉快な検査ではありませんが、骨盤底の緩みや骨盤臓器脱が尿失禁の原因になっていることが多いので、正しい診断をする上で欠かせないものなのです。

また、受診当日の服装は、おなかの触診があるのでワンピースではなく上下に分かれるもの、パンツやタイトスカートではなく長めのフレアースカートやギャザースカート、タイツではなくソックス、脱ぎやすい靴がお勧めです。