本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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女性の頻尿・尿失禁の主な原因は、再三述べて来たように「骨盤底の緩み」です。改善するには、骨盤底をいたわる生活をするのが1番です。生活習慣を見直す方法を幾つかご紹介しましょう。

◆肥満大敵 骨盤底に負担をかける原因の最たるものは、肥満です。太ると内臓や腰回りに脂肪がつき骨盤底は常に重い荷物を支えている状態になるため、伸びきってしまうのです。腰や膝も痛めがちです。肥満は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の原因にもなるため、食生活では糖質、脂肪、塩分は控えめにして、野菜や海藻、きのこなどをたっぷりとるようにしましょう。腹八分目を守り、バランスのよい食生活を!

◆便秘の解消 排便のたびに強くいきむと骨盤底に大きな負担がかかり、ますます緩んでしまいます。また、直腸にたまった便が膀胱(ぼうこう)を圧迫して尿がもれやすくなったり、尿意を我慢しにくくなったりします。骨盤底のためにも、お肌のためにも、便秘は解消したいものです。

◆冷えを解消 体の冷えは頻尿を招いたり、排尿困難を悪化させることがあります。女性は冷え性の方が多いので注意が必要です。夏も冷房で体が冷えるため、ソックスやひざ掛け、肩掛けで保温に努めましょう。

◆適度な運動 尿失禁があると、もれるのを心配して家に閉じこもりがちになりますが、気分転換のためにも軽い運動をお勧めします。減量にもなり、筋力がつけば、骨盤底も「1人」で懸命に支えなくてもよくなり、元気を取り戻せることでしょう。

◆規則正しい生活 私たちの体は自律神経の支配を受け、交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで膀胱も緩んだり収縮したりしてうまく排尿できる仕組みになっています。しかし、不規則な生活をしていたり、ストレスがたまったり、女性ホルモンのバランスが崩れたりすると、自律神経がスムーズに働けなくなります。自律神経を元気にすることが気持ちのいい排尿につながります。

◆服装 コルセットやガードルはおなかを締め付けるため腹圧が少しかかっただけで尿失禁しやすくなります。足に合わない靴も血行が悪くなり、骨盤底を傷めます。

◆体操継続 尿失禁が治ると、つい「もういいか…」と思ってしまいがちですが、油断するとまた骨盤底は緩み始めます。家事をしながら、テレビを見ながらでも少しずつ「骨盤底筋体操」を続けていきましょう。尿失禁に悩まされない生活を確保するためには、これが最も効果的です。(おわり)

◆お知らせ 次回は、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏の新連載「ロカボですごそう~ウィズコロナ~」がスタートします。