北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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米国が2015年の「食事摂取基準」で、初めて脂質摂取量の上限を撤廃したことを前回、お伝えしました。ただ、「JAMA」(米国医師会雑誌)でその解説をしたタフツ大のモツァファリアン教授は「飽和脂肪酸とトランス脂肪酸については制限すべき」と言っています。

脂質をつくる脂肪酸は(1)飽和脂肪酸(2)オメガ9(3)オメガ3(4)オメガ6(5)トランス脂肪酸-に大きく分類されます。(1)は常温では固体のバターなど動物性脂質、(2)の代表はオリーブ油、(3)は魚脂のEPA、DHAや、最近人気のエゴマ油、アマニ油、(4)は大豆油、コーン油、ごま油((2)が多い種類もあります)などです。

マーガリンに含まれるとされる(5)のトランス脂肪酸については、動脈硬化症を進め、心筋梗塞などを増加すると評価は定まり、メーカーは削減に取り組んでいます。では他の4つはどうなのでしょうか。

モツァファリアン教授がトランス脂肪酸と並べた飽和脂肪酸は、日本では脳卒中とは負の相関にあり、摂取量が多い方が脳出血や脳梗塞の発症リスクを下げるという研究があります。欧米では摂取量が多い人の方が心臓病も脳卒中も増えるという論文がある一方で、摂取を減らしたら心臓病が増えたという論文も2つあります。日本人の飽和脂肪酸と心臓病の関係性ははっきりしていません。

オメガ9について悪い評価をする研究者はいないと思います。スペインの研究では、1週間でオリーブ油420CCを使い切りなさいと指導を受けたグループが、心臓病、脳卒中の発症率を30%減らしています。

オメガ3は、私が知る限り、12の無作為比較試験があり、うち3つは動脈硬化症の予防に成功していますが、残りは失敗しています。どう評価すべきか。次回お話しします。