北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

   ◇   ◇   ◇

カロリー制限を試したことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、カロリー計算は面倒ですし、そもそも正確なカロリー摂取量を把握することなどできません。短期的には我慢して痩せたけれど、結局は我慢しきれずリバウンドしてしまったという人が大半でないかと思います。

カロリー摂取を減らすと、人間の体は少ないエネルギーでも体が維持できるように、一番エネルギー消費が大きい筋肉を削ろうとします。そして骨はコラーゲンの新陳代謝が悪くなり、もろい骨に変わります。米国で1日1200~1800キロカロリーに制限したグループを10年追跡した研究が2013~14年にかけて報告されています。10年で体重は平均6~7キロ減っていましたが、体重とともに減少していたのは骨密度でした。

食べることを我慢して筋肉や骨を減らす。筋肉量、骨量が減ると基礎代謝が減って痩せにくくなります。つらくなって、カロリー制限を中断すると、リバウンドします。その時、増えるのは筋肉、骨ではなく体脂肪です。筋力の低下や骨粗しょう症は、高齢者の要介護や寝たきりの原因として問題になっているロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)の要因です。カロリー制限は将来的にロコモを招く恐れがある危険なダイエット法なのです。

これに対し、タンパク質、脂質は満腹になるまで食べていいロカボ(ゆるやかな糖質制限)はどうでしょうか。体格指数(BMI)27以上の人を対象に<1>カロリー制限+脂質制限<2>カロリー制限+地中海食<3>糖質制限の3つの食事療法を比較研究した論文が08年に発表されています。最も減量効果が大きかったのは糖質制限でした。北里研究所病院のデータでは、ロカボは太っている人の体重は減らしますが、痩せている人はエネルギー、タンパク質を十分取るので筋肉、骨がしっかりし、体重を増やしました。ロカボは肥満者のメタボ対策になるだけではなく、痩せている人のロコモ対策にもなるのです。