感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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私は血液内科のほかに感染対策の仕事をしています。感染対策は、抗菌薬の使用状況をチェックしたり、適正使用を推奨したり、ウイルス性疾患や結核疑いをはじめ、感染上の事由で隔離が必要な場合の判断をしたり、院内の感染状況を把握して対応を検討しておりました。

感染管理の最大の仕事は、冬になると流行するインフルエンザです。同じ流行パターンでインフルエンザが流行することはほぼないので、工夫が必要です。実は医学はインフルエンザの流行をコントロールできたことなんて、1度もないのです。

それでも、ここ数年の流行パターンから、インフルエンザA型のどの型が流行するか? そして、インフルエンザB型が流行するのか? というパターンで判断して対応準備します。数年前までは「H1N1Apdm2009」型と「H3N2A香港」型が1年ごとに交互に流行し、B型が数年に1度大流行するというパターンでしたが、ここ2年くらいは「H1N1Apdm2009」型が年内に流行し、年明けに「H3N2A香港」型が出たり出なかったりというパターンです。私の解析では、2019~20シーズンは、年内「H1N1Apdm2009」型→年明け「H3N2A香港」型→そして春はB型が久々の大流行という予想でした。これはインフルエンザ流行パターンとしては、最悪です。対策も長期にわたり、コストもかかるという予想でした。

「H1N1Apdm2009」型は比較的発熱しない患者さんが多く、また熱が出るまでの期間が長い。抗原検査陽性も6割方です。院内発生した場合により広範囲に対応しないと院内に拡散してしまいます。

「H3N2」のA型は暴露されて(細菌、ウイルスにさらされて)からほぼ2、3日で高熱が出ます。ゆえに見つけやすいです。簡易抗原検査は8割程度で有用性が高いです。重症化は見られますが、早期発見しやすいです。

B型に至っては、症状がない方も時折います。抗原検査は5割程度との信頼性と感じています。ただB型はやはりA型と比べると、症状も軽く重症化はしない印象です。

インフルエンザのシーズンは、ほぼ感染対策に時間を取られてしまいます。