感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

   ◇   ◇   ◇

コロナ対策のため病院も換気のために、窓を開けています。ただでさえ空調も古く、外壁の掃除もままならない建物が多く、窓を開けると熱気と粉じんが入って来ます。そして蚊なども入り込んで来ます。蚊を媒介するマラリア、デング熱、ジカ熱なども心配になりますが、とりあえず今年は大丈夫でしょう。国際交流が以前のように再開されるとわかりませんが…。

インフルエンザに関しては、対策上ワクチンを打つくらいしかありませんが、ここのところ毎年ワクチン不足です。流通の問題を解決して、なるべくみなさんに行きわたってほしいと思います。

私的には、小児から青年層に優先的に打ってほしいです。コロナでもそうだったみたいですが、やはりこの層の感染が流行の「主流」だと思います。

ただ、インフルエンザがはやらなかった年の次は、大流行年というおまけがつきます。季節性とはいえインフルエンザの大流行のときは、医療機関は逼迫(ひっぱく)します。この大流行では、「ワクチンの株が外れた(ワクチンと異なる型のインフルエンザが流行した)」とか「国民の気の緩み」とかいろいろ取りざたされますが、結局は感受性のある集団が数多く形成されるかどうか、だと思っています。かといって「毎年軽くかかっておきましょう」とも言えません。

今シーズン、あまり胃腸炎は減ってはいません。コロナウイルスは、もともとは消化器系ウイルスで、呼吸器系に転向したみたいです。消化器系においては、競争に負けていたのかもしれません。

今、注目しているのは季節性コロナ「cHCoV」の動向です。「cHCoV」がもし極限まで減れば、我々は今後この「SARS-CoV2」と長く付き合うのでしょう。逆に「cHCoV」が毎年と同じく残れば、我々は「SARS-CoV2」と早晩お別れできるでしょう。

「cHCoV」が残った場合は、問題があります。「SARS-CoV2」で垣間見えた、見えない感染拡大がコロナ全般の本質かもしれません。恐らくそれが正解で、我々はやはりコロナウイルスのことをまったく把握できていなかったのでしょう。過去のSARS(重症急性呼吸器症候群)と同じように。