世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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うつ病を合併するリスクが極めて高い「不安症」の代表的疾患は、前回説明した一般的には“あがり症”で知られている「社交不安障害」。それに匹敵する代表的な不安症には、もう1つ「パニック障害」があり、認知度は高い。

パニック障害の代表的症状が“パニック発作”です。パニック発作自体は病気ではなく、この発作をきっかけにパニック障害という心の病気が表面化するのです。

あなたは次のような症状を経験したことはありませんか。「心臓がドキドキする」「全身や手足が震える」「汗をかく」「胸の圧迫感や痛み」「窒息するような感じ」「呼吸が速まり、苦しい」「体が宙に浮いたような、自分が自分でない感じ、現実感を失う」「口が渇く」「吐き気や腹部の不快感」「発狂やコントロール不能への恐怖」「足がガクガクする」「死への恐怖」「めまい、ふらつき、頭が軽くなり、気が遠くなる」「考えがまとまらず、頭の中が真っ白になって、人と話ができない感じ」「視界がぼやける」等々。

これらの諸症状のうち、心臓や呼吸にかかわる症状を含んだ4つ以上の症状が同時に起こるのがパニック発作。死や発狂を意識するほどの強い不安にも襲われます。発作の原因に心あたりのないことが、いっそう不安をかき立てます。

そして、パニック障害の進行とともに発症しやすいのが「うつ病」。次のパニック発作がいつ起こるのか、常に不安で、神経過敏になってしまう。このような不安定な精神状態が、やがてうつ病を併発させます。コロナ禍では、その不安がより強く出てしまうのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)