男性は、男性ホルモンの「テストステロン」の低下で多くの病気を引き起こします。その中でコロナ禍だからこそ、よりしっかりチェックすべきなのが「男性更年期障害」と言われている「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」。

コロナ禍とあって「電車に乗ると新型コロナに感染するのでは」「職場でも新型コロナに感染するのでは」「とにかく外出するのが怖い」など、不安が過剰になる「不安障害」から「うつ病」になる人が多い。そのうつ病と間違えられやすいのが、テストステロンの低下で発症するLOH症候群なのです。

うつ病と間違えられやすいとあって、その症状はうつ病患者と極めてよく似ています。「寝つきが悪い」「ぐっすり眠れない」「イライラする」「憂鬱(ゆううつ)な気分」「力尽きたと感じる」「突然汗が出る」「集中力が低下する」「不安が常に付きまとう」「筋力の低下」「性欲減退」などがあります。

その症状に、人はついつい「年をとったからだろう」と考えがちです。しかし、それが続くと、精神科や心療内科を受診する人も出てきます。そこで、うつ病と診断されて治療をされている人が少なくない。

精神科や心療内科で半年くらい治療を受けても改善しないと、さらに悩みが増す。そんな時に「妻にアドバイスしてもらった」と話す患者さんが意外と多いのです。「あなた、それは男性ホルモンが低下することで起こる“男性更年期障害(LOH症候群)”かもよ。新聞かテレビで知ったの。泌尿器科のメンズヘルス外来を受診してみたら」と。このアドバイスで実際に受診され、正しい診断に結び付いている人が意外に多いのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。