「男性ホルモン(テストステロン)」の低い人は、新型コロナに感染しやすい上に重症化しやすいことがわかっています。この重要なテストステロンは20歳を超えるとゆっくりと低下し始め、老化によってより低下は速くなります。

テストステロンの低下で困るのは、さまざまな病気になりやすくなる点。それは「骨粗しょう症」「動脈硬化」「肥満」「糖尿病」「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)」など数多い。

その中の骨粗しょう症は、前立腺がんの治療でよくわかります。前立腺がんの治療にはテストステロンをなくすホルモン療法があり、その大きな副作用が骨粗しょう症。テストステロンを抑え込むと骨がもろくなる骨粗しょう症を発症しやすくなります。結果、骨密度がどんどん低下することで、腰椎の圧迫骨折、転倒しただけで骨折してしまう。すると、患者さんのQOL(生活の質)が著しく低下してしまいます。

そして、内臓脂肪を減らす働きのあるテストステロンが減少すると肥満に結び付きます。肥満は多くの病気の源。そこから、糖尿病になりやすくなり、悪玉コレステロールを増加させることになり、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化の先には、心血管疾患の狭心症、心筋梗塞が-。これは生死に大きく結びついてしまいます。

また、「コロナうつ」と間違えられやすいLOH症候群も、テストステロンの減少によって出てきます。「よく眠れない」「イライラする」「不安状態になる」のでうつ病と思われがちですが、テストステロンを上げることで改善が可能です。うつ病の治療とはまったく異なります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。