「男性ホルモン(テストステロン)」の低下は、うつ病と間違えられやすい不調が身体に出てきます。それが「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」。このテストステロンが低下している男性は、男性特有のがんである「前立腺がん」を発症すると、実は悪性度の高いがんになることがわかっています。

その前立腺は、ぼうこうの出口にあって尿道を包んでいるクルミ大の臓器で、精液の一部である前立腺液を作る分泌腺です。そこに発症するがんが前立腺がん。他のがんと同様に早期には症状はありません。

やや進行すると、「精液に血が混じる」「朝起きるとパンツに血がついていた」「血尿が出る」といった症状があります。すぐに泌尿器科を受診すべきです。

この症状ではなく、加齢で前立腺が肥大する前立腺肥大症の症状の「尿の勢いが弱い」「残尿感がある」「夜間に何度もトイレに起きる」などで泌尿器科を受診し、PSA(前立腺特異抗原)検査を受けて、がんが発見されることも多くあります。

LOH症候群の陰に前立腺がんが隠れているかもしれません。もちろん、テストステロンが低下していても症状の出ない人は多い。

50歳を超えるとテストステロンとPSA検査を一度測定することをお勧めします。悪性度の高い前立腺がんであっても早くに知ることができるし、それを予防することもできるからです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。