がんの中では、男性で最も罹患(りかん)者数の多いのが前立腺がん。予防の基本は「禁煙」「1日8000歩」「肥満解消」、そして「食生活の改善」です。その食について、前回は「1日3杯以上のコーヒーを飲む」効果を挙げました。今回は2つの食材をお勧めします。

それは、「大豆イソフラボン」と「トマト」。「イソフラボン」はポリフェノールの一種で、大豆製品に多く含まれているから大豆イソフラボンなのです。もともとポリフェノールは強い抗酸化作用があるので、がん予防に効果のあることは知られています。

ただ、より前立腺がんに特化すると、イソフラボンは前立腺がんを増やすタンパク質を抑制したり、がん細胞が栄養をもらう血管を阻害したりする作用が知られています。

抗酸化作用とがんの増殖を抑える2本立てでパワーアップ。日本人はこの大豆イソフラボンを1日18ミリグラム程度しか摂取していません。1丁300グラムの絹ごし豆腐には78~183ミリグラムの大豆イソフラボンが含有されています。前立腺がんの予防には少なくとも1日100グラムは食べるべきです。

もう1つのトマトをお勧めするのは、次のような研究報告があるからです。前立腺がんのリスクは、新鮮なトマトを食していると11%減少した。一方、加熱したトマト食品では19%も減少したというのです。トマト食品であればケチャップでもジュースでもOK。新鮮な生のトマトの場合は、ミニトマトの方がより効果はあります。このトマトパワーは、含まれている「リコピン」のパワー。リコピンは赤い色素のことで、抗酸化力は極めてパワフルです。

これらの食べ物は、がん予防のみならず男性ホルモン(テストステロン)にも大きく影響するので、メンズヘルスには不可欠な食材。次回からは「メンズヘルスの診療」です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。