「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」こと「男性更年期障害」を疑った場合は、泌尿器科の専門外来である「メンズヘルス外来」を受診しましょう。

このメンズヘルス外来の診察は、「問診」の次にLOH症候群を調べる「AMSスコア」が世界的に行われています。前回、これについては詳細にチェック頂きました。加えて、「血液検査」「うつ症状スコア」などを行って総合的に診察が行われます。

血液検査は幅広く行われます。LOH症候群は前立腺肥大症、前立腺がんなどとの関係も指摘されています。そこで、血液検査には前立腺関連の数値を調べるとともに、LOH症候群では最も重要な男性ホルモンの「テストステロン」の数値を調べます。

テストステロンの数値は、11・8pg/ml以上が正常、11・8~8・5pg/mlが要注意、8・5pg/ml以下は要治療。ただ、10pg/ml程度であっても、男性更年期障害の症状が出ていると治療の対象になります。

基本はAMSスコアが中等度以上であれば、その時点でLOH症候群を疑い、加えて、テストステロン値が8・5以下だと治療開始の目安とします。

ただ、LOH症候群の症状とうつ病の症状とは、かなり似通っているところが多いので、誤診されるケースもあります。正しい診断に結び付けるために、ここまでできちっと診断がつかない場合は、「うつ症状スコア」などを行って、より正確な診断に結び付けます。

また、LOH症候群と思ってメンズヘルス外来を受診されても、患者さんに自殺願望があると、すぐに精神科に移って頂きます。LOH症候群によるうつ症状で、死にたくなるレベルまで思いつめることはありません。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆井手久満(いで・ひさみつ) 1991年宮崎大学医学部卒業。国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学等を経て、20年4月から独協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢学会理事等。前立腺がん予防や男性ホルモンが研究テーマ。今年9月18~19日、日本メンズヘルス医学会を会長として開催する。