一般的に「男性更年期障害」と言われている「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」の治療は、男性ホルモンの「テストステロン補充療法」を中心に行います。この筋肉注射を受けることで、半年から1年でLOH症候群から立ち直る患者さんが多い。

ただ、2割くらい再発する人がいますが、ホルモン補充療法を再度行うことで元気になります。中にはテストステロン補充療法だけでは十分な効果が見られない患者さんもいます。

その場合は、漢方薬を併用する治療を行います。漢方薬とは「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」です。この漢方薬にはテストステロン値を上げる作用があり、ストレスホルモンのコルチゾールを減少させる効果があります。

これを併用することでLOH症候群を改善できることは、患者さんを治療していてはっきりわかります。患者さんの中には、この漢方薬をずっと使い続ける人もいます。

テストステロン補充療法、漢方薬の併用などの治療が行われていますが、それとともに患者さん自身がしっかり行わねばならないこともあります。

それは「生活習慣の改善」。テストステロンを一時的に補充しても、望ましくない食生活、ストレス過多の生活、適度な運動ができない生活を続けていては、元のもくあみに--。コロナ禍とあって、より外に出ない生活、ストレスの多い生活が続いています。そこを上手に改善する必要があります。要は、減少したテストステロンを薬物療法で補充することに加え、テストステロンの減少カーブを緩やかにする生活習慣を生み出すことが、LOH症候群の治療には不可欠なのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)