「こころに効く精神栄養学」(女子栄養大学出版部)の著者で精神栄養学の第一人者、帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀(くぬぎ)浩主任教授によるとこの新しい学問は2000年代に入って欧米から広がったという。

「精神栄養学が新たな学問分野として確立してきたのは21世紀に入ってからです。従来より精神科の治療といえば薬物療法、精神療法、心理療法が主流でしたが、一方、欧米では、脳をつくっている栄養の不足や過剰、あるいはバランス異常の関与が精神疾患とかかわっていることがわかってきた。そこで食生活や栄養学的な方法に注目が集まったわけですが、もともと神経伝達物質をはじめ脳は本来食べたものからできていますから、やはり、食べ物はプラスして重要だということです」

海外では医療現場に反映されているが日本での知名度はまだまだというのが現状とのこと。こころの病には育った環境や性格が重要ともいわれるが、日々の食事も大いに関係するという点が新しい。

食事が改善すればこころも元気になる、そんな考え方が広く人々にも受け入れられはじめている。功刀主任教授が続ける。

「つまり、精神栄養学とは精神疾患と関連する栄養学的問題とそれを改善するための治療について研究する分野ということになります。脳にはさまざまなはたらきがありますが、広い意味で頭のはたらきにかかわる栄養学的な研究ですね」