加齢とともに膝痛は生じやすい。その主な原因は変形性膝関節症。太ももの大腿(だいたい)骨とすねの脛骨(けいこつ)の表面を覆う軟骨がすり減り、関節組織に炎症が起こって痛みが生じるようになり、やがて骨が変形して歩行困難になる。国内の患者数は推計で約2000万人。膝が痛いと変形性膝関節症だろうと思われがちだ。

「近頃、60代以降で関節リウマチを発症することが増えているので注意してください」と、東邦大学医療センター大森病院人工関節治療センターの中村卓司センター長は話す。

関節リウマチは、免疫異常に伴い関節の滑膜(かつまく)に炎症が生じ、増殖した滑膜が関節の軟骨や骨組織に障害を起こす病気だ。以前は30~50歳が好発年齢とされていたが、近頃は60歳以降で関節リウマチを発症することが少なくなく、膝などの大きな関節で痛みが出るため、変形性膝関節症と間違われやすいという。

「膝痛の治療で、膝にたまった水を抜いても症状が軽減されないときは、関節リウマチの疑いがあります」

膝関節に炎症が起こると、関節をスムーズに動かす滑液の産生・吸収バランスが崩れ、滑液が水のように膝関節にたまってゆく。それが組織を圧迫して痛みにつながるため「水を抜く」治療後は楽になる。だが、関節リウマチは、水以外が原因で膝関節が腫れているため水を抜いても治らない。

中村医師は「膝痛の原因を知った上で、適切な治療を受けることが大切です。痛みが続くようならば、変形性膝関節症以外の病気も疑って早めに受診しましょう」と話す。その上で「股関節のやわらかさと脚の筋肉量の維持は、膝を守るために重要です。若い頃に膝を痛めた方や最近運動不足の方は、運動を行う前に、ぜひストレッチを行っていただきたい。ちょっとした習慣が膝を守ることにつながります」とアドバイスする。