日本人女性の発症するがんで最も多いのが「乳がん」。2019年の罹患(りかん)者数は約9万8000人です。罹患者数の多い乳がんですが、早期に発見して適切な治療を受けると治る確率の高いがんです。早期に発見するには検診を受けることが大事です。

乳がん検診は自治体が行っており、40歳以上の女性は、2年に1回受けることができます。そこで通常行われているのが「マンモグラフィー検査」で、もっとも古くからある検査です。乳房用のエックス線検査で、2枚の板で乳房をはさんで、薄くのばしてエックス線撮影をします。これにより、しこりやしこりになる前のごく早期の乳がん(石灰化)も発見できます。

ところが、この検査を受けて、「マンモグラフィー検査は痛いから2度と受けない!」という方も中にはいらっしゃいます。生理前に受けると乳房に張りがあり、2枚の板で乳房をはさむと痛いのです。この検査を受ける時は生理開始から10日後くらいに受けるのがお勧めです。生理後に受けるとよい、と知っておいてください。そして、なぜ痛くなることもあるのに強く挟むのかというと、被ばく量を減らせるからです。加えて、見落としのないようにきれいな画像を作るというメリットもあります。

一方、マンモグラフィー検査には弱点もあります。40代くらいまでの若い女性に多い「高濃度乳房」の場合、脂肪量に比較して乳腺が多い状態で、マンモグラフィー検査では乳房全体が白く写ります。乳がんも白く写るので、乳がんがあったとしても乳腺の白さに隠れて見えなくなってしまいます。乳房は年齢とともに黒っぽく写ってくるようになるので、50代以上では乳がんがはっきり見えることが増えてきます。ただし、日本人女性全体として西欧人と比較して高濃度乳房の方が多いという傾向があり、注意する必要があります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)