乳がんが疑われ、検査で分かり、その進行状況と乳がんのタイプが分かると治療になります。治療は大きく「局所治療」と「全身治療」が行われています。

局所治療は、がんのできている場所に対する治療で、「手術」と「放射線療法」があります。一方、全身治療は薬を使った「薬物療法」になります。

局所治療はしこりのある場所に対しては強力な治療で、手術で切除するとその部分についてはがん細胞をゼロにできる可能性の高い治療です。放射線療法も、放射線を照射することで手術同様にがんをゼロにすることができます。

ただし、がん部分を切除しても、がん細胞が身体のどこかに潜んでいる可能性があります。どこに潜んでいるかわからないがん細胞をたたくには、全身治療の薬物療法を組み合わせることが多くなっています。

0期の乳がんはほぼ100%局所治療だけで治ります。それが1期以上となると手術だけでも治る確率はかなり高いのですが、薬物療法を加えるとより治る確率が高くなります。そのため、両方を組み合わせて行う治療をお勧めすることが多いです。全身治療の薬物療法で用いられる薬は「ホルモン薬」「分子標的薬」「抗がん薬」が使われています。

患者さんに対してどの治療をお勧めするかは、通常は乳がん学会の出している「乳がん診療ガイドライン」に従って行います。これまで出されている科学的なデータに基づいて最も効果の高い治療が設定されています。これを標準治療と言っていますが、ベスト治療と言うほうが正しいでしょう。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)