乳がんにはさまざまなタイプがあり、タイプによって効果のある薬が異なります。

だから、乳がんと分かった場合はどのタイプの乳がんかが重要になります。がん組織を採取して、がん細胞を特殊な方法で染めて「女性ホルモン受容体」と「HER2」というたんぱくを持っているか否かを顕微鏡で調べます。乳がんの大部分(約70%)が女性ホルモン受容体陽性で、約15~25%がHER2陽性です。

2つのたんぱくの陽性・陰性の組み合わせで4つのタイプに分けます。この中で女性ホルモン受容体陽性でHER2陰性タイプは全体の約60%と大部分を占めるので、さらにがん細胞の増殖能力が高いか低いかで2つのタイプに分けます。そのため、タイプは4つではなく次の5つになります。

<1>「女性ホルモン受容体陽性・HER2陰性(増殖能力が低い)」ルミナルAタイプ<2>「女性ホルモン受容体陽性・HER2陰性(増殖能力が高い)」ルミナルBタイプ<3>「女性ホルモン受容体陽性・HER2陽性」ルミナルHER2タイプ(10~15%)<4>「女性ホルモン受容体陰性・HER2陽性」HER2陽性タイプ(5~10%)<5>「女性ホルモン受容体陰性・HER2陰性」トリプルネガティブ(10~15%)です。ただし、ルミナルAとルミナルBは明確に区別できるわけではありません。それは、境界に近いところのがんの場合もあるからです。

タイプが分かると、それに合わせて適している薬を使うので、治療効果はぐんとよくなります。ホルモン薬、抗がん薬、分子標的薬のどれがどのタイプに合うかは次回に紹介します。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)