医師・山崎章郎(ふみお)さんは、日本の緩和ケアのリーダーの1人。その山崎さんがステージ4のがんになりました。再発前に受けた予防目的の抗がん剤治療の副作用が強く、非常に苦しい思いをしたため、ステージ4の診断が出た後、抗がん剤治療を受けることをちゅうちょしました。

<標準治療の壁>

がんの治療法は、放射線治療や抗がん剤治療など認められる治療法が標準治療として決められています。つまり、怪しい治療を医療保険ではやれないということです。

現在の標準治療としてはステージ4の固形がん患者には抗がん剤治療しか残されていません。抗がん剤治療を行わないと決めると、病院はもう何もしてくれず、患者はどうしたらいいのかわからなくなります。緩和ケアを受けたいと考えても、ホスピスはどこもいっぱい。不安にさいなまれながら、手探りで終末期を過ごさなければならなくなります。

<ステージ4の壁>

どのような治療を受けるかという選択は、どのように残りの人生を生きるかという選択に直結し、まさに人間の尊厳だ、と山崎医師は言います。「糖質制限ケトン食」などの食事療法を考え自身で実践し、希望する患者さんには医師として指導を行っています。

緩和ケアの専門医がステージ4のがんになり、自らの体を通して、治癒でなくても生活の質が少しでもよくなるように、壁に挑戦しています。標準治療と緩和医療の間の新しい選択ができる時代が来ることを祈っています。(医師で作家・鎌田實)