高血圧は自覚症状がなかなか出にくいことから、「静かな殺し屋(サイレントキラー)」と呼ばれています。時間をかけて、じわじわと血管を傷つけて、自覚症状がないまま動脈硬化を進めるからです。

<心筋梗塞・脳卒中・認知症を引き起こす動脈硬化>

動脈硬化とは、血管が弾力を失って硬くなった状態のこと。血液の流れが悪くなって、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなったりします。その結果起こるのが、心筋梗塞や脳卒中。さらに脳の動脈硬化によって脳血管性認知症を引き起こすこともあります。 実際、高血圧患者は正常血圧の人よりも、認知症を発症するリスクが1.6倍高いという研究報告があります。

<まず生活習慣を改善しよう>

医学的には最大血圧が140以上か最小血圧が90以上になると、高血圧と診断します。(正常血圧は120/80未満)

ぼくは血圧がこの境界にいる方や高血圧の患者さんには、すぐに薬を出すことはしません。まず生活習慣の改善で血圧を下げることが大事だと思っているからです。ただし必要なときには薬を出しています。

生活指導で目標とする血圧は、130/80未満。さらに70歳以上の人の血圧の治療目標は150/90未満に上げています。

だいたいの高齢者は動脈硬化があります。動脈硬化が少しある人に、無理やり強い薬で血圧を下げると、脳や心臓に血液を流す力が弱くなってしまうのです。そのため、年齢や血管の状況を見極めた、微妙なさじ加減が必要です。(医師で作家・鎌田實)