肝臓病は「沈黙の臓器」とあって、かなり状態が悪くならないと症状を出しません。最終段階ともいえる肝硬変でもそうです。それを何とかするには、正しく肝臓病を知って、健康診断を欠かさず受けることが重要です。今回からは、肝臓病のなかでも最終段階と言われる「肝臓がん」に注目しましょう。

肝臓がんの2021年の死亡者数は2万4839人で、肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓(すいぞう)がんに次いで5番目に多い。ただ、肝臓がんの死亡者数は04年にピークを迎え、その後は減少に転じています。それはウイルス性関連のがんが減少したからで、今は非ウイルス性の肝臓がんが増えている状況です。つまり、肥満や糖尿病など生活習慣病、そしてアルコール性を背景にした方が増えているのです。とはいえ、肝臓がんの超ハイリスク群は「B型・C型肝炎に起因している肝硬変患者さん」。この患者さんには「3~4カ月ごとの検査、プラス腫瘍マーカーの測定。さらに、半年から1年ごとにCT・MRI検査をオプションで行う」ことが推奨されています。

そして、「超」のつかないハイリスク群はアルコール性脂肪肝炎と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)で、血液検査、超音波検査をしっかり行いましょう。超音波検査では、エラストグラフィという機能を備えた超音波検査です。この場合は造影剤を静脈注射して検査を行うとごく小さながんも白く映ってわかります。そこで、鑑別診断が必要となった時は、CTやMRI検査を行うのです。

ここまで検査が進み、「これはがんに間違いない!」と医師が判断すると、「生検」に--。超音波ガイド下、もしくはCTガイド下で腹部から肝臓のがん部分に針を刺し、細胞を採ります。採取した肝細胞にがんがあると、がん治療に進むことになります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)