東京慈恵会医科大学付属病院栄養部の管理栄養士、赤石定典さんは、日本人の食の歴史にも目を向ける。

「鎌倉時代の武家では粗食が励行されていたのですが、当時は、みそ汁のぶっかけ麦飯や“一汁一菜”が食事のスタイルだったわけです。これは、野菜いっぱいのみそ汁と干物などのおかずが1品というシンプルなものですが、主食のご飯は、玄米や麦飯でした」(赤石さん)。

かつて日本人は、玄米のビタミンやミネラル、大麦の食物繊維を取り、干物からカルシウムやタンパク質、具だくさんのみそ汁でバランスをとっていた。

「この一汁一菜が“一汁三菜”というかたちになって広がるわけですが、その献立は、主食であるご飯、みそ汁、主菜1品、副菜2品という栄養バランスが向上した現代の食事スタイルにもつながっています。免疫力を高め、健康な食事にはこの一汁三菜スタイルが基本だと考えています」(赤石さん)。

コメともち麦を7対3の割合で混ぜた麦ごはんと、発酵食品であるみそ汁が腸内環境を整える。

「主菜には、体や血液をつくるタンパク質を多く含む肉や魚、豆腐や卵、副菜には不足しがちな野菜、イモ類、豆、キノコ、海藻などを小鉢にします」(赤石さん)。

近年、ダイエット食としてブームとなっている麦ごはん。その効果に着目したのが慈恵医大の創始者、高木兼寛博士だった。高木博士は江戸時代に「かっけ」の治療として「麦ごはんにタンパク質のおかず」を取り入れた。かっけはビタミンB1不足が原因として特定され、現在の病院食でも供されている。