がんの中で、罹患(りかん)者数が男女合わせると最も多いのは「大腸がん」です。毎年約16万人が苦しむ大腸がんはどこにできるのか、まずは基本を知って欲しいと思います。

人は食事をしないと生きていけません。その食べた物は、消化器が消化、吸収して排せつします。食道、胃、小腸からつながって消化器の最後が大腸です。

その大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸とつながって、最後は肛門につながっています。大腸は長さが約1・5メートルで、壁の厚さはわずか4ミリ程度しかありません。

この1・5メートルの大腸の中にがんができるのですが、最もがんができるのが「直腸」と「S状結腸」で、肛門の近くです。直腸とS状結腸で大腸がんの60%ができます。食べた物がここまでくると固形便になっていて、それがとどまることが多いためです。遺伝的要因などもありますが、固形便が長くとどまると、それによって慢性的な刺激を受けることもS状結腸と直腸にがんができやすい要因、と言われています。

そこで知って欲しいのは、直腸やS状結腸にがんができると「便潜血検査」で発見しやすいということです。実は、その検査だけで多くの方々が助かる可能性があることを認識してください。

がん検診では便潜血検査が必ず行われます。それを必ず受けて、陽性となった場合は次の検査に進みます。それが「内視鏡検査」です。これをきちっと受けて大腸がんが見つかったとしても、早期に発見できると“大腸がんも怖くない”のです。内視鏡治療で対応できる早期がんが増えると大腸がんで亡くなるリスクはグーンと低下します。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)