昨年と今年登場したアルツハイマー病の新薬は、軽度認知障害(MCI)と軽度認知症を対象とし、これまで以上に早期発見・早期治療が重要になる。その後押しとして、筑波大学付属病院認知症疾患医療センター部長の新井哲明教授は、IBMリサーチと共同でAI(人工知能)を用いた診断・鑑別支援ツールを開発。2024年5月発表の新しいツールは「視線パターンでの鑑別」である。
「視線パターンを計測し解析・比較を行い、AIに機械学習させて新たな診断支援ツールを作りました。認知症といっても、アルツハイマー病以外にレビー小体型認知症など、別の病気が原因となっていることがあります。このツールは、日常生活シーンの画像を10分間見るだけで、MCI、アルツハイマー病、レビー小体型認知症の鑑別が高精度で行えます」(新井教授)。
アルツハイマー病はアミロイドβやタウといったタンパク質がたまり、神経細胞が死滅していく。レビー小体型認知症では、α-シヌクレインというタンパク質がたまり、そのかたまりであるレビー小体の形成が神経細胞死を誘導する。それぞれ原因が異なるのだ。AIによる診断支援ツールでは、明らかな違いが見られるという。
たとえば、日常生活シーンを見たときに、アルツハイマー病の人はカレンダーや書籍のタイトルなどをスルーし、文字や標識などへの注意力が減少する。一方、レビー小体型認知症の人は、画面の中心に視線が置かれたままというケースだ。
「認知症の種類によってダメージを受ける脳の部位が異なるので、視線が変わるのです。発声や描画も変わります」と新井教授は話す。

