日本人男性が罹患(りかん)するがんで最も多いのは「前立腺がん」。2021年の罹患者数は9万5584人です。この前立腺がんの特徴は、「男性ホルモン依存性のがん」ということ。がんが男性ホルモンによって増殖が促進されるのです。「LOH症候群(男性更年期障害)」に対して男性ホルモンの「テストステロン補充療法」を解説してきましたが、誤解しないでほしいのは、“男性ホルモンを補充すると前立腺にがんができるのではない”、ということ。すでに前立腺がんのある人にテストステロン補充療法を行うと、その増殖が促進される危険性があるということです。

男性更年期障害を疑って患者さんが受診されると、私たちは男性更年期障害のチェックをするだけではありません。その時に、前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA(前立腺特異抗原)」を必ずチェックします。この数値が低いとテストステロン補充療法はできます。

気になるPSAの基準値は一般的には4・0ng/ml以下。年齢的には50~64歳は3・0以下、65~69歳は3・5以下、70歳以上は4・0以下です。

PSA値が基準値を超えているときは、がんの有無や広がりなどを調べる「MRI(磁気共鳴断層撮影)検査」をします。MRI検査で異常所見がある場合は、大きな病院の泌尿器科を紹介します。また、PSA値が正常であっても、非常に小さいがんがあるかもしれません。ホルモン補充療法を行ううちに徐々にPSAが上昇し、前立腺がんが後に発見されることもあるので、患者さんに再度リスクの話をします。そのうえで、患者さんが十分納得された段階で、テストステロン補充療法に入ります。患者さんは、理解できないことがあれば主治医にしっかり質問をすると良いでしょう。私たちはしっかりお答えします。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)