前回は、術後にがん細胞の遺伝子を調べる検査を行って遺伝子変異があった場合、抗がん剤ではなく「分子標的薬」を使っていることを、ご紹介しました。その薬物療法を選択するのに重要なのが「遺伝子検査」です。
今、遺伝子検査が推奨されているのは「再発転移」を起こしてきた症例です。がん細胞にはそれぞれ遺伝子異常があります。分子標的薬は、その特定の遺伝子の異常に作用してがんをたたき、また、増殖するのを抑えたりするのです。現在、分子標的薬が対応できるがんの遺伝子変異型は、9つです。
再発転移のケースでは、複数のがんの遺伝子検査を行います。ここの遺伝子を1つずつ検査する単一(シングルプレックス)遺伝子検査と、複数の遺伝子を同時に検査するマルチプレックス(マルチ)遺伝子検査があります。マルチに行う遺伝子検査は、結果が判明するのに2~4週間程度かかります。その遺伝子検査に必要ながん細胞は、採血で得られた血液(リキッドバイオプシー)や気管支鏡検査で得られた組織から採取します。
術後の患者さんであれば、患者さんが何かするのかというと、そういうことはありません。手術検体を検査に使います。手術を行っていない患者さん、手術が適応にならない患者さんの場合は、リキッドバイオプシーや気管支鏡などの生検でがん組織を採ってくる、ということをして対応しています。遺伝子検査は、肺がんの患者さんそれぞれにピタリと合う分子標的薬をみつけて使うためです。
遺伝子検査で、分子標的薬が適応であることが分かると、患者さんは「これで治る」、と。しかし、全員が治るかというとそうはいきません。最初は薬が効いていても、分子標的薬も耐性ができるのです。すると、今まで効いていた薬が効かなくなります。そのときは、再度、遺伝子検査を行います。それで分子標的薬に適応薬があると、患者さんは再度、分子標的薬の有効性に喜びを感じることができます。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

