天領盃酒造/佐渡市
「すっきりした味わいの中に米のうまみを感じる酒を造りたいですね」と市橋幸則杜氏

 佐渡には5つの酒蔵がある。その中でも両津港から最も近く、観光酒蔵として見学や試飲、販売を通年行っているのが天領盃酒造だ。創業は1983年(昭58)と比較的新しい酒蔵で、麹(こうじ)作りをコンピューター管理するなど、当時の最先端技術が蔵の随所に採用されている。地元出身で新潟清酒学校6期卒業生の市橋幸則さんが蔵人それぞれの技術向上を図りながら、「米本来の味わいを表現した飲みやすい酒」を目指し、取り組んでいる。

 今回の1本は11月15日に発売された今季の新酒「純米しぼりたて生原酒」だ。麹米には60%精米の五百万石を使用。搾ったばかりの原酒をそのまま瓶詰めするため、アルコール度数は17度と少し高め。搾りたてのフルーティーな香りとちょっとピリッとするフレッシュ感。純米酒の搾りたてを原酒で、どこまでもピュアな状態で味わえるのが大きな魅力だ。「純米なのでやや酸味があり、白ワインのような味わいを感じると思います」と市橋杜氏(とうじ)。さまざまな食のシーンで楽しめそうだ。

 ちなみに、この酒を搾る前の「にごり酒」も同日に発売され、一般のにごりよりもすっきりとしたソフトな味わいを心待ちにしているファンも多い。

 仕込み水は蔵から一望できる佐渡島の主峰、金北山の伏流水を3本の井戸から引き、すべての仕込みにこの軟水を使っている。営業部の柴田衛さんは「うちの酒は全般的に辛口ですが、実際に飲んだ方からは『辛くない、やさしい味わい』という声が多いですね。多分水が影響しているのだと思います」と、佐渡の大自然の恵みが蔵の味わいを支えていることを語る。佐渡ならではの絶景と味覚、そして地酒を味わいに冬の海を渡るのも、いい旅だ。

[2016年11月19日付 日刊スポーツ新潟版掲載]