「監督の采配で勝つ試合なんてシーズンで5試合ぐらい」。知将・野村克也をして、そう言ったと伝えられる。ファンや我々メディアはときに采配批判をするがプレーするのは選手だ。もちろん敗戦の責任は指揮官にある。だが本質的なところを言えば、采配が勝敗に直接関係するのはその程度というのも事実だと思う。
「連敗して『なんとか最後に1つ取って帰ろう』ということで。みんながそれぞれの場所で、いい仕事ができたと思います」。7回に貴重な適時打を放った坂本誠志郎はヒーローインタビューでそう話した。それがプロ野球の本質だろう。
では指揮官にやれることはないのか。もちろん、ある。主体的にやれること、やるべきことは確実に2つ。まずは「投手継投」だ。この日に限れば、それがハッキリと出た形になった。カギは「84球」だ。
阪神先発の伊原陵人は5回までモンテロに1発を浴びただけの1失点。球数は「84」だった。ここで指揮官・藤川球児はスッパリ継投を決断。6回から試合を救援陣に託した。
一方、敵将・新井貴浩は先発・森翔平に期待する。1回、佐藤輝明に2ランを浴びた森だが、その後は踏ん張り、6回までこの2失点でこらえた。その時点での球数は「84」だ。そのまま続投したが7回に4安打を浴びるなど2失点。これで試合の行方は決まった。
阪神も広島も今季のブルペンは絶好調ではない。それを考えれば、ここは監督の決断だ。7回以降、1点差のままブルペン勝負になっていればどうなっていたか、とは思う。1点とはいえリードしていた面は大きいが、この日、球児はその部分で勝ったと言えるかもしれない。
もう1つ、指揮官がやるべきなのはチームの雰囲気づくりだ。選手がプレーしやすい状況にするのはもちろん“一丸ムード”にするのも重要な仕事だ。それはどんな種類でもいい。極端なことを言えば「監督のために」でなく「オレたちが頑張ろう」でもいいはず。とにかくムードを高めていくことだ。
球児は試合前、円陣に加わり、厳しい表情のまま何事か話した。異例のことだ。それを選手がどう受け取ったか。それは分からないが気合は入ったのかもしれない。その時点で指揮官としては成功だろう。そして「(リーグ戦で)3連敗はしない」というここまでの流れは守られたのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




