昨年8月にMLB機構が開催を発表した時から、絶対に見に行きたいと思っていた最大にして最高のイベントに行って来ました。8月2日(日本時間3日)、米南部テネシー州ブリストルで行われた自動車レース場での初の公式戦「スピードウエークラシック」です。
そこは米最大のモータースポーツNASCARの象徴的なコースで知られる「ブリストル・モータースピードウエー」。最大16万人を収容する巨大なレース場です。
試合前日、場内に足を踏み入れると大きなスタンドに圧倒され、最上階まで行くと足がすくんでしまうぐらい。さしずめアルプスならぬ、ヒマラヤスタンドといった様相です。
そのサーキット内に野球場を設置するという斬新な試み。サーキットの観客席からは遠くにグラウンドが見えて、通常の球場と異なる圧巻の光景。それがまた、昔クリーブランドにあったミュニシパルスタジアムのような郷愁を呼び、まさにアメリカならではの巨大なスケールを感じさせてくれます。
当日午後3時に開場すると、巨大なスタンドはみるみるうちに満員に膨れ上がりました。その時、1993年4月9日にコロラド州デンバーのマイルハイスタジアムで行われた、新球団ロッキーズの歴史的ホーム開幕戦。現地からNHK衛星放送で広岡達朗氏と解説した、あの開幕戦史上最多8万227人を動員した試合がよみがえって来ました。
言い遅れましたが、ブリストルはカントリーミュージック発祥の地と言われ、音楽と切っても切れない関係にあります。また、テネシー州全体が「ミュージックシティ」として有名なナッシュビルや、ブルース発祥の地であるメンフィスなど音楽好きにはたまらない地域です。
そこで今回は試合に先駆けてグラミー賞に3度も輝くカントリー歌手、ティム・マグローがコンサート。かつて、メッツの抑え投手として“Ya Gotta Believe!”で有名になり、1980年フィリーズ初の世界一に貢献したタグ・マグローを父に持つ超人気歌手のライブで場内のムードは最高潮。もう、これだけで観に来たかいがあります。
いよいよ午後7時24分、レッズ-ブレーブス戦がプレーボールとなりました。地元テネシー州で育ち、昨年ドラフト1巡目(全体2位)指名でレッズ入団。今年6月に早くもデビューした大型新人チェース・バーンズが歴史的第1球をいざ投げようとした、まさにその時です。
始球式の時から突然雨脚が激しくなり、待つこと2時間以上で午後9時41分にようやく試合開始。それでも雨は止まず、開始早々の1回裏途中にサスペンデッドゲームを宣告。でも、歴史的なイベントが2日間も楽しめるとは得した気分になりました。
翌日も曇天ながら雨は降らず、午後1時過ぎに試合再開。両チームともレース仕様の限定ユニホーム以外にも、ホームランでレーシングカーがサーキットを爆走しながら1周。また、プレーの随所にエンジン音を効果的に出すなど、演出が抜群です。
さらにイニングの合間や選手の登場曲は、定番のカントリーミュージック。特に、テネシー州の州歌「ロッキー・トップ」が流れるとチアガールたちは躍り出し、場内は大盛り上がり。テネシー州という音楽と自然、そして歴史豊かな、魅力的な場所に来たことを実感させてくれます。
こうして見ると、アメリカ文化の象徴であるカントリーミュージック、モータースポーツ文化の象徴であり、米国人の生活に根付いたNASCAR、そしてアメリカの国民的娯楽と言われる野球が一体化。これぞアメリカ、最高のエンターテインメントです。
試合中に元阪神のランディ・メッセンジャーと偶然ばったり会いました。「現在はテネシー州の近くに住んでいて、両チームに現役時代お世話になった監督やコーチがいるので息子2人を連れて見に来た」とか。そんな最強助っ人も「最高にエキサイティングだ」と大興奮していました。
試合は公式戦史上最多の9万1032人を動員しました。一部でファンの不満の声が続出などと報道されましたが、決してそんなことはありません。映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台や、現存最古の球場リックウッドフィールドをも超えるほど、永遠に記憶に残る、ユニークな舞台だったと思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)