渡辺史敏のアメリカンリポート

メッツ・フレージャー、ゴムボールで「隠し球」成功

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「隠し球」と呼ばれるトリックプレーがある。ランナーが出た塁を守る野手がさもボールを持っていないふりをして立ち、ランナーが塁から離れたところでタッチしてアウトをとるものだ。たまに行われるので見たことがある人も多いのではないだろうか。

トッド・フレージャー(15年7月13日、撮影・菅敏)
トッド・フレージャー(15年7月13日、撮影・菅敏)

ただ現地3日のメッツ対ドジャース戦で行われたようなプレーを見た人はなかなかいないのではないだろうか。そのプレーが行われたのは2回裏、ドジャースの攻撃だった。5番のアレックス・ベルドゥーゴ外野手が打席に立ち、左翼方向にファールフライを打ち、スタンドへと飛ぶボールをメッツのトッド・フレージャー三塁手が追った。ボールはスタンド際に落ち、フレージャーがスタンドへジャンプしながらこれをキャッチした、ように見えた。塁審はすぐにフレージャーに駆け寄り、座席下に倒れながらフレージャーがボールの入ったグラブを掲げるのを見てアウトが宣告されたのである。

果敢なファインプレー、と思われたのだが実際は違ったのだ。地元テレビ局のSNYが試合後レポートしたのは、フレージャーが一度はボールをつかんだものの、落とし見失っていたということだった。ではクラブに入っていたのは何か?実は飛び込んだ場所のスタンド最前列に子供が座っており、スタンドに設置されたテーブルにお土産用のゴムのボールを置いていたのである。フレージャーはとっさにこのゴムボールを拾って、さもキャッチしたかにように演技していたのだ。

同局のビデオではテーブルに置かれたゴムボールとファンが本物のボールを拾い上げる様子がしっかりと映っていただけでなく、アウト宣告後フレージャーがあたかもファンサービスでボールをスタンドに投げたようにふるまって”証拠隠し”をする様子まで撮影していた。

隠し球はルールに反していないが、今回のフレージャーの行為は厳密にはルール違反といえる。この試合はメッツが4対2で勝利した。ただこれまでのところ、フレージャーに対してリーグもチームも罰則などは出していない。そんなおおらかなところもMLBの魅力と捉えたほうがいいのかもしれない。

◆渡辺史敏(わたなべ・ふみとし)ジャーナリスト。1964年生まれ。兵庫県出身。明大卒業後、科学雑誌出版社勤務を経て、95年渡米。 MLB、NFLなど米プロスポーツと、IT分野で取材・執筆活動を行う。14年3月帰国。 独自の視点で米国メディアの報道を分析、スポーツビジネスのリポートなどに定評がある。

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