【シカゴ(米イリノイ州)17日(日本時間18日)=四竈衛】カブスのダルビッシュ有投手(32)が、レッズ戦で6回2安打無失点と好投し、4月27日以来、14試合、81日ぶりとなる今季3勝目(4敗)を挙げた。最速158キロの速球を軸に力勝負で7奪三振。昨年のカブス移籍後、本拠地初白星でメジャー通算60勝目に到達した。

腹の底から絞り出した雄たけびこそ、復調の証しだった。6回2死一塁。4番プイグを156キロの速球で空振り三振に仕留めたダルビッシュは、自然とほえていた。「かなり気持ちを入れていきました」。本拠地の「ユー・コール」を背に、気迫あふれる表情でベンチへ向かった。

ただ、冷静だった。その直前、1死三塁のピンチで三ゴロから本塁封殺した直後、自らの意思で投手コーチを呼んだ。「気持ちが入りすぎている。時間を置いた方がいい」。1発を浴びれば同点の場面。捕手と配球を再確認したうえで速球勝負を挑んだ。

白星から見放されても、常に前を向いた。「明けない夜はない。やまない雨はない。その言葉が大嫌い。僕らがやっていることは自然なことじゃない。夜は勝手に明けるし、雨だって放っておけばやむ。ただ僕らは放っておけばずっと雨だし、ずっと夜なんです」。大小、重さの違う球を練習に取り入れ、最新機器の映像で分析を繰り返した。地道な作業をコツコツと反復し、徐々にフォームが固まった。勝敗なしの試合が続く一方で、白星は時間の問題だった。「自分のことをギブアップしない。自分を信じて常に研究することをやめない、ということを肝に銘じてやってます」。

前回12日から2戦連続無失点。試合前には、日本ハム時代のようにハイネック、長袖のシャツで汗を出すなど、「雰囲気作り」(ダルビッシュ)もはまり始めた。「僕はどちらかと言うと、評価が高い時でも『いや僕はそんなに』と言うタイプですが、今は間違いなく人生の中で一番です」。昨年9月に右肘骨棘(こっきょく)除去手術を受けてから10カ月。心身ともに力強さを身に付けたダルビッシュが、本拠地シカゴで新生の1歩を刻んだ。