メジャーの野球に泥を塗ったとも言える、電子機器を利用したサイン盗み問題。エンゼルス大谷翔平のコメントは他の選手とはひと味違った。

「なんで打たれたかが、サインを盗まれていたからじゃないかって片付けてしまったら、個人的にはもったいないと思う。使われていたとしても抑えられる何かは必ずあると思う」

違反していたアストロズに対して激しく非難する他球団の選手、報復を企てようとする者など、実際に被害を受けた側の厳しい論調と比べると、第三者による冷静な見解のようだった。

今回の件に意見を求められ一瞬、戸惑った。「うーん、それはいいことではないと思いますけどね。カメラを使ってしまうと、同じ状況下の試合ではないのでアンフェアになってしまう」と、公平性に論点を見いだしていた。

監督解任となったレッドソックスとアストロズに大谷も打ち込まれたことがある。メジャー1年目の18年4月17日にレ軍相手に2回3失点で初黒星。右手中指のマメで降板した。9月2日のアストロズ戦では3回途中2失点で降板。右肘痛からの復帰登板も、不完全燃焼だった。18年シーズンの両球団については不正疑惑にとどまっているが、大谷に関してはサイン盗み以前に、投げる、打つという単純な構図で「同じ状況下」ではなかったといえる。

裏を返せば、当該の2試合は「サイン盗みをされて打たれたのでは?」と議論されるレベルではなかった。だからこそ大谷が「それ(サイン盗みのこと)を考えたら自分の成長がない」と言うのも納得がいく。

一連の騒動では蚊帳の外といった印象があった。圧倒的な力を継続する投手に相手は何かを仕掛けてくる。「同じ条件下で(投手の)クセを盗むのは努力の成果。見破った選手が素晴らしい」とも話した大谷。その対象選手となるまでに、完全復活してもらいたい。