上々の慣らし運転だ。広島黒田博樹投手(40)が25日、沖縄キャンプで初めてフリー打撃に登板した。鈴木誠、ルーキー野間を相手に35球を投じ、安打性の当たりは4本。スプリット以外の全球種を投じ、動くボールの威力を見せつけた。緒方孝市監督(46)も驚いた。

 正午を知らせるチャイムが響き渡ると、黒田はゆっくりとマウンドに向かった。ランチタイムに設定されたフリー打撃は、コイ党にとっては「ショー」だった。ワインドアップからテンポよく若手2人に投じていく。最後の野間との対戦だけはセットだった。安打性の当たりは4本。差し込み、力のない打球を生み出した。

 「少しステップアップしたかな。左打者の手元に投げるのは意識していた。でもこの時期に何を判断しようというのはないです」

 昨季終了後から、初となる打者との対戦だった。本人には試運転にも満たない段階だったが、周囲からは驚きの声が上がった。何度もうなずいていたのは、ケージ裏から見守った緒方監督だった。自身の経験をもとに、印象を口にした。何より「この1球」にかける思いが他の投手とは違った。

 緒方監督 これだけ球を動かせるものなんだと。クロがアメリカ行く前に、日南で自分も打撃練習をしたこともあるけど。そのときは剛球のなかで球が動いてくる印象だった。今は手元で曲げたりいろんな動かし方をしてくる。イメージはちょっと違う。

 熟練の技だ。球の動かし方を変え、ギリギリまで変化させない軌道を描いている。セ・リーグの5球団がスコアラーを派遣。復帰戦で対戦が濃厚なヤクルト衣川篤史スコアラーが「思ったより動いている」と驚けば、中日善村一仁スコアラーも「新しいイメージでとらえている」と過去のイメージを捨てた。

 動くボールに注目が集まるが、黒田は「ツーシーム系を変化球だと思っていないので」と淡々。早いテンポから投げ、わずか9分間でショーは終わった。投げ終わりにはフリー打撃では異例とも言える大拍手が起きた。週末にはシート形式の練習に登板する。ざわつきなどどこ吹く風。黒田は泰然自若で、1球に魂を込める。【池本泰尚】