軽くバットを投げて、阪神福留がゆっくり歩き出した。プロ20年目。時間をかけて磨き、すり合わせてきた感覚が逆転3ランを確信させた。

 2点を追う4回無死一、二塁。DeNA飯塚の初球をジャストミート。全身の力をすべて伝えた打球は、猛烈な勢いでバックスクリーンへ。電光掲示板下に直撃し、はね返ってグラウンドに落ちた。7号決勝3ラン。左翼スタンドの大歓声を合図に、福留はゆっくりと走りだした。

 「ああだこうだ考えずに、最初から思い切っていこうと。ここ最近のなかでは完璧だったと思います。(飛距離は)だいぶ風に助けられました」

 ここぞで打つ。これが主将の存在価値だ。序盤は完全に主導権の握り合い。1回に飯塚の乱調で3点を先制したが、藤浪が3回に突然つかまって5失点。4回に無得点で終われば、DeNAの流れになる。福留の集中力はピークに。まして直前の無死一塁で2番植田のバントの打球を捕手嶺井が二塁へ悪送球の失策。もらったチャンスで、一振り。“確信歩き”で主導権は完全に阪神に移った。

 何万球も打ってきた。見なくても、分かるものがある。福留は打撃練習で打球の行方を見ない。軽々とスタンドインする会心の打球ほど、行方を気にせずに次の準備に入る。「そこは大切じゃないから」と笑い「どちらかと言うと」と続ける。「見ているのはパーンって上がっていく瞬間。回転とかを見ていることが多いかな」。ボールがバットに当たってからのわずかな時間で打球の質を確認。感覚とすり合わせを重ねて、ここまでたどりついた。

 もらったチャンスを確実に仕留めて、終盤はワンサイドゲームに。チームは今季最多の17安打を放ち、14年8月5日ヤクルト戦で20点を取って以来の16得点と快勝。連勝で借金を4に減らした。

 DeNAをかわして4位に浮上。「せっかく昨日、今日といい流れをつくったので、このまま明日勝てるように頑張ります」と福留。頼れる主将が引っ張り、虎の逆襲が始まる。【池本泰尚】