阪神のクライマックスシリーズ(CS)突破のキーマン、ドラフト1位ルーキー近本光司外野手(24)の勝負強さに、古巣・大阪ガスの橋口博一監督(52)が太鼓判を押した。社会人時代は大一番で結果を残し、自ら道を切り開いてきた。その勝負強さを間近で見てきた橋口氏は、近本が勝利への突破口を開くことを確信している。

「持ってるかもしれないですね」。橋口監督はそんな言葉で、近本のCSでの活躍を予言した。ルーキーでいきなりの大舞台も気後れすることなく暴れ回るはず。18年1月から監督に就任し、ドラフト1位で指名されるまでの過程を見てきたからこそ言える言葉だ。

大阪ガス入社当初、近本の描く未来に「プロ」の言葉はなかった。周囲にも「普通にサラリーマンとして歩むと思っていた」と話していたという。転機は昨年4月のJABA岡山大会。近本は5試合で3本塁打を放った。実はその直前、近本は負傷していた。橋口監督は「去年の春先、2月か3月でしたか、自打球を当ててあまり練習出来なかったんです。1カ月以上かな、試合にも出ていなかった」と振り返る。だが、復帰直後に大貢献。プロが現実味を帯び始める暴れっぷりだった。

近本の評価を決定的にしたのが、その後の7月の都市対抗。近本は打率5割2分4厘で首位打者に輝き、最優秀選手に贈られる橋戸賞を受賞。「よう打ちましたからね。打ったし、走ったし。でも本人はまだ調子悪い感じだと、そういうふうに言ってました。そんなに絶好調な感じではないけど、うまいぐらいにヒットが出たり」。本調子でなくても大舞台で結果を残し続け、プロへの扉を開いた。

橋口監督は近本の武器を「思い切り」という。「乗ったら手のつけられないタイプ。社会人の時も1打席目打ったら3本打つ、みたいな。最初からガンガンいくほうがいいと思うしね」。レギュラーシーズンとは違う緊張感に包まれる短期決戦。それでも、近本が打って走って活躍する姿は変わりないに違いない。【磯綾乃】