西武が“伝統の勝ち方”で、球団通算5000勝を達成した。1点を追う4回に6連打を含む8安打を集中させて5点を奪い、逆転に成功。今季最多タイとなる先発全員16安打の10得点で一気に押し切った。巨人、阪神、中日、オリックス、ソフトバンクに次ぐメモリアル星は、チームに脈々と受け継がれる、強く振る伝統を象徴するように打ち勝って決めた。2リーグ分裂後の50年以降に誕生した球団では、最速での節目到達となった。

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記念ボードを高々と掲げた辻監督は、歴史をかみしめた。西鉄時代の50年3月16日東急戦から72年の時を重ね、たどり着いた5000勝目。「それだけライオンズの歴史があるということ。本当に夢のよう。幸せ者」。黄金時代の選手として2500勝、3000勝を経験し、この日、指揮官として、再び節目を迎えた。佐賀で過ごした幼少期が“ルーツ”だったのかもしれない。父が運転するバンに揺られ、何度も通ったのは平和台球場。福岡にある西鉄の本拠地だった。「帰りは後ろに布団を敷いてるから、子供3人は寝ててね」。そう思い出も重ね、感慨に浸った。

豊田、中西、大下と続く「流線型打線」、秋山幸、清原、デストラーデの超強力クリーンアップ「AKD砲」、秋山翔、山川、森らの「山賊打線」。月日をまたぎ、球団には強打のDNAが根付く。辻監督は言う。

「まずバットを振れなかったらダメ。基礎をしっかり。強い体を作るという伝統がある。サンペー(中村)、栗山、中島(現巨人)、(松井)稼頭央もそうでしょう。やっぱり強い選手が下から育つ。それだけの練習はする」

今季の戦いは投手力の充実が目を引くが、このメモリアルな1勝は、受け継がれる伝統を象徴していた。助っ人オグレディを除き、生え抜きで埋まるスタメンは先発全員安打の16安打。そして10得点を重ねた。

4回。代わったばかりの山崎福に源田、森、山川、中村、呉念庭、鈴木と6連打を浴びせた。さらに愛斗、外崎も含め1イニングで8安打を集めた。3回までは緊急先発の山崎颯に1安打5三振と快投を許した。しかし、投手交代という勘所で、一気にたたみかけた。それもまた、85年からの10年間でリーグ優勝9度、日本一6度という「常勝軍団」を築いた西武らしい、ここぞでの集中打だった。

昨季は42年ぶりの最下位という屈辱を味わった。さび付かせてしまった西武の看板を再び輝かせるべく戦う今季。首位ソフトバンクとは0・5ゲーム差。辻監督は「まだこれからでしょう」と言った。まだまだ新しい、強い歴史を紡いでいく。【上田悠太】

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