ボクシングで昨年の日本人男子世界戦は、海外含めて27試合あった。日本人対決2試合入れて通算14勝15敗。勝ったのは田中が3勝、井上、京口、寺地、村田、井岡が2勝、岩佐が1勝。王座獲得は井岡、村田、岩佐の3人で、いずれも返り咲き。外国人相手に限ると12人が挑戦に失敗した。新王者誕生はなく、ちょっと寂しい。

田中の3勝は光るが井上に尽きるだろう。ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)を制するとにわかファンが増えた。NHKの紅白歌合戦で審査員など、年末年始のテレビ出演も多かった。女子中高生にも声を掛けられるようになったそうだ。

ボクシングは昭和の時代からある、数少ないプロ競技の一つ。十分認知されているが、人気沸騰した時代は昔のこと。白井、原田、具志堅…。近年でいえば辰吉でもう20年前。当時は全国のジムで練習生が増えた。

今は競技が激増し、きついものは敬遠されがち。ボクシングは個人競技で試合も少なくブームになりづらい。昨年はラグビーの年で、2大会連続の大番狂わせも初の8強入りで力は本物を証明。にわかファンを沸騰させたがこちらも競技人口は減少傾向で、人気というより認知されたと言えるだろう。

日本では重量級でプロアマ制覇の村田と両輪と言える。村田もビッグマッチ実現の期待があるが、井上にはどこまで強さを高めていくかの期待が大きい。全階級を通じてランキング、パウンド・フォー・パウンドという用語が世間一般に通じるようになるかだ。

今年初戦は4月にラスベガスに進出となり、WBO王者カシメロ(フィリピン)との統一戦が有力だ。WBC王者ウバーリ(フランス)も標的。WBA、IBFと王座を統一した井上。ぜひとも今年は2試合を実現して勝利し、4団体完全制圧をしてほしい。

4団体で最新のWBOは88年に設立された。この22年間で4団体統一王者は4人だけ。ミドル級のホプキンス(米国)が最初。テイラー(米国)はホプキンスに勝ってのもの。スーパーライト級クロフォード(米国)とクルーザー級ウシク(ウクライナ)は、2団体統一後に2冠対決を制したものだった。

4本のベルトを1本ずつ獲得していったのは、いまだにホプキンスしかいない。チャンスすら、そうあるものではない。WBSS制覇でトップランク社と契約したのも、こうしたマッチメーク、ビッグマッチ実現のため。今年一番の願いである。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

ドネアに勝利しアリ・トロフィーを掲げる井上尚弥(2019年11月7日撮影)
ドネアに勝利しアリ・トロフィーを掲げる井上尚弥(2019年11月7日撮影)