総合格闘技RIZINの“前身”と言えるPRIDEの元ミドル級王者で人気スター選手だったヴァンダレイ・シウバ(46)が総合格闘技から「公式に」引退したと8月31日(日本時間9月1日)、米専門メディアMMAファイティングが報じた。同メディアのポルトガル語のポッドキャスト番組でシウバ自身が「公式に総合格闘技から引退した」と表明したという。

気になるのはリングからの引退と言わなかったことだ。同メディアによると、総合格闘技からの引退を口にしたシウバは「再び戦うことになる唯一のチャンスはボクシングになるだろう」と新たな挑戦も示唆。元UFCミドル級王者アンデウソン・シウバ(ブラジル)ら総合格闘技のレジェンドたちが他競技の有名人たちとボクシングルール、あるいはエキシビション形式でファイトしている。その流れをシウバ自らも意識した発言とみられる。

シウバは13年3月、UFC日本大会でブライアン・スタン(米国)にKO勝ちして以降、総合格闘技マッチの勝利はない。ラストマッチは18年9月の米団体ベラトール206大会で組まれたクイントン“ランペイジ”ジャクソン(米国)戦だった。正式な引退表明はなかったが、この後にシウバは「気分のムラ、すぐに怒り出す、忘れっぽい、眠れない」など脳しんとうに似た症状があることを明かしていた。

現在、シウバは母国パラナ州で政治活動を加速させている。8月にはブラジル議会の連邦議会議員に立候補を表明。18年の選挙では落選しているだけにリベンジの決意は強い。さらに息子のトール(19)がアマチュアながら総合格闘技デビューへの準備を進めていることも大きい。9月25日、ブラジル・クリチバにある4500人収容のスタジアムで開催される「ファイト・ミュージック・ショー2大会」でパウロ・ランゲル(ブラジル)と対戦する予定となっている。

シウバは「試合で起きうることは私も分かっている。(息子の試合は)エキサイティングなことだ。すべてを経験してきたし、大変な仕事だと分かっている。有名人の息子で、お金を持っていたとしても、そこで重要なのはハードワークと練習。息子が既にプロのように振る舞っていることを神に感謝している」と愛息による総合格闘技へのまじめな取り組みを評価している。

また、トールの今後についても「今はベラトール、RIZIN、UFCなどの素晴らしいプロモーションが数多くある。アスリートが自分の仕事を披露し、最高の戦いをする機会を与える素晴らしいプロモーションだ。彼のキャリアがどのように進展し、どんな機会があるかを見て、最善の道を選択する」と日本での試合も視野に入れている。シウバが総合格闘技から「公式に引退」するのは寂しいが、将来的なボクシングマッチでのリング復帰、そしてDNAを引き継ぐ息子トールの日本進出の可能性は、日本のファンにとっても楽しみな話題になるはずだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)