1年納めの11月場所も、2年ぶりの福岡開催となる九州場所として無事に終わり、2021年の本場所も閉幕。コロナ禍により何かと行動制限がある中、苦境の中で力士たちは奮闘しました。日刊スポーツでは年末恒例「第10回日刊スポーツ大相撲大賞」を、今年も紙面で掲載しています。競技性の違いで、野球のように個人成績が詳細に出ない中、日刊スポーツの相撲担当記者が、さまざまな角度からデータを抽出し“個人賞”を勝手に制定するものです。ここでは紙面では掲載されないものを紹介します。重ねがさね“勝手に”決めた賞で、ご褒美はありませんのであしからず。対象力士は6場所全てで幕内に在位した力士に限りました。ご了承のほどを…。

【珍手賞】

今年は寄り切り、押し出しはじめ40手の決まり手が出ました(昨年は36手)。そのうち「この決まり手で勝ったのは、この力士だけ」という唯一無二を調べました。昔はよく出ていて「珍手」というには抵抗がある決まり手もありますが、そこは目をつぶってご一読を…。

◆一本背負い=豊昇龍

◆首投げ=翔猿

◆送り引き落とし=霧馬山

◆うっちゃり=照強

◆内掛け=豊昇龍

◆裾払い=千代翔馬

◆腕ひねり=照ノ富士

◆きめ倒し=照ノ富士

◆足取り=照強

◆引っかけ=遠藤

◆下手ひねり=照強

名だたる業師ばかりがそろいましたが、大型力士で横綱ながら照ノ富士の、技の多彩さが光ります。その横綱が所属する伊勢ケ浜部屋の小兵・照強は3つの“珍手”を繰り出しています。部屋での稽古も活況を呈しているでしょう。

【アップダウン賞】

初場所から11月場所までの番付昇降の推移から、振れ幅の激しかった力士は…。

<1>遠藤=27枚

<2>琴ノ若=26枚

<3>千代の国、琴恵光=23枚

いずれも上下動を繰り返し、ケガの影響もあってか波のある年でした。たとえば遠藤は、名古屋場所の東前頭筆頭から途中休場し、翌秋場所は東前頭11枚目にダウン。ただ実力者だけに、秋場所は11勝を挙げ九州場所は西前頭4枚目に上げ、8勝7敗と勝ち越し。来年は上位、そして三役に定着し、大関への足掛かりをつかみたいところだ。

【労せずしてのゴッツァンで賞】

不戦勝の多い力士。ケガや病気の不戦敗力士を思えば手放しでは喜べないが、汗をかかずに貴重な白星を手にすれば内心、うれしくないはずがない。今年は不戦勝負が17番あり、春場所と秋場所が各5番で最多。11月の九州場所は、初日に栃ノ心が休場(豊山が不戦勝)しただけで無事に乗り切った。その中で、高安が最多となる3番の“おこぼれ”にあずかった。逆に不戦敗は貴景勝、遠藤、千代の国が各2番。不測のケガはつきものだが、くれぐれも体調管理にはご留意ください。なお高安は不戦敗も1つあり、不戦勝負に4番かかわったのは最多。千代の国は不戦勝も1番あり、不戦勝負は3番で続く。

【行司泣かせで賞】

土俵際、際どい勝負で行司軍配は…。そんな勝負に物言いはつきもの。今年6場所で、物言いがついたのは55番だが、その物言いにかかわった勝負が多かった力士は…。

<1>正代=7番

<2>隆の勝=6番

<3>遠藤、隠岐の海=各5番

このうち、行司軍配は相手方力士に上がりながら、物言いが付いて差し違え、もしくは取り直しの末、白星を挙げた「命拾いで賞」は隆の勝と遠藤が各3勝。豊昇龍が2勝で続いた。日頃の行いが良かったのか、勝負は最後まであきらめない姿勢が良かったのかでしょう! 

また「1日2番勝ったで賞」も。これは行司軍配は自分に上がりながら、取り直しとなり、その相撲も勝った力士で、阿武咲、豊昇龍、高安、千代の国、隆の勝の5人が1回、経験しています。ご苦労さまでした。

【ワンチーム賞】

幕内、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口と、1場所で6階級の各段優勝力士が決まります。もちろん相撲は個人競技ですが、そこは稽古も含め部屋の結束が求められます。1年6場所で延べ36人が輩出される中、部屋別で最も多かったのは。

<1>伊勢ケ浜部屋=6回

<2>木瀬部屋=4回

<3>追手風部屋、高田川部屋、錣山部屋、高砂部屋、宮城野部屋=各3回。力士数が多い、複数人の関取がいて稽古環境に恵まれている…などが当てはまる部屋ばかりです。切磋琢磨(せっさたくま)は必要ですね。

【敢闘精神にあふれたで賞】

場所の毎日、打ち出し後に日本相撲協会から「敢闘精神あふれる力士」が発表される。本場所会場への来場者及びアプリの有料会員が投票できるもので、幕内と十両の2階級で上位3位までが発表される。今年1年、もっとも「敢闘精神あふれる」と評価された力士は…。

1位選出が最多は貴景勝の16回、2位は大栄翔の14回、3位が明生の7回と続く。

順位に関係なく選出回数で見ても、貴景勝は40回で最多。2位は隆の勝で30回、3位は明生の28回と続く。

次に、日刊スポーツが独自に採用したポイント制で見るとどうか。1位選出で3ポイント、2位で2ポイント、3位で1ポイントとして計算すると、ここでもトップは貴景勝の90ポイントで後続を大きく引き離す。2位以下は大栄翔61ポイント、明生51ポイント、隆の勝45ポイント、若隆景35ポイント。貴景勝のトップはここ数年、不動のもので内面からあふれる激しい相撲にファンの支持が集まっていることが分かる。

【幸せな1年だったで賞】

ストレート給金で歴代断トツの、あの大横綱白鵬でさえ、8日目に勝ち越した時はホッとすると言うほど、勝ち越し決定は力士にとって至福の時。その勝ち越しを1年6場所の全てで達成したのは照ノ富士と御嶽海の2人。全勝1回、14勝1回、13勝1回、12勝2回と11勝1回とハイレベルで通した照ノ富士の強さは言うまでもない。一方、何だかんだ言っても55勝35敗だった御嶽海の安定感は、照ノ富士を除けば群を抜く。ただ、優勝2回の実力者に求められるのは、そこではないんですけど…と言いたくなるほど、来年は期待してます。

一方、逆に1年6場所全て負け越した、泣くに泣けない力士は…。残念です、栃ノ心と輝の2人。輝は昨年九州場所から通算すると7場所連続負け越しです。来年1月の初場所は、16年名古屋場所から維持してきた幕内の座から、十両に陥落しそう。捲土(けんど)重来を期待しています。

力士のみなさん、1年間ご苦労さまでした。日刊スポーツ大相撲担当一同、新年の活躍も期待しています。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

琴ノ若(左)を足取りで下す照強(2021年5月9日撮影)
琴ノ若(左)を足取りで下す照強(2021年5月9日撮影)