元日本スーパーウエルター級王者で国内現役最年長41歳の野中悠樹(井岡弘樹)が王者細川チャーリー忍(34=金子)を3-0判定で破り、王座を獲得した。日本ジム所属選手としては、40歳で東洋太平洋ライトヘビー級王座を獲得した西沢ヨシノリを上回り、日本ボクシングコミッション(JBC)公認タイトルの史上最年長奪取となった。

野中は勝利のコールに両手を天に突き上げた。大歓声の観客席へ。「すみません。伝説作っちゃいました」とおどけつつ「でも、通過点。世界戦をやるまで応援よろしくお願いします」と頭を下げた。

41歳のサウスポーは若々しさと老獪(ろうかい)さで、リング上を支配した。1ラウンド2分過ぎ。ドンピシャの左カウンターでダウンを奪い、ペースをつかんだ。「ガッと入ってきたところに合わせた。手応えないパンチ。あんなん初めてかも」。20代のようなフットワークで、王者の追い足をかわし、パンチを食っても浅く、シンを外した。アッパーでガードをこじあけ、左を当てる。14戦10KO勝ちの王者の大振りはダッキングで派手に空振りさせた。

「衰えたと思ってませんから。(体調の)ピークは同じ。ただ、そこに行くまでの疲れや、時間が多くなっただけで」。清掃の自営業で金を稼ぎながら、とにかく走る。朝のロードワーク=10~12キロを含め、1日20キロは当たり前。月平均約500キロのランニング量が、40歳を過ぎてもタイトル戦線で戦える秘密だ。今回は1カ月半前から玄米暮らし。元世界2階級覇者の井岡弘樹会長に12万円の炊飯器で炊いた300グラム分を差し入れてもらった。「めちゃくちゃ快便になるし、助かりました」と笑った。

井岡会長は「僕は29歳で引退した。彼は定年(JBCライセンスは原則37歳で失効)を乗り越えて、41歳。プロボクサーのお手本ですよ」。夢の世界挑戦へ。WBOのローカルタイトルをとったこともあり、世界ランク入りは確実だが、ミドルという階級を考えれば、道は険しい。それでも、野中は報道陣、会長に「お願いします!」と懇願する。さらなる奇跡を起こすため、まだまだ走り続ける。

◆野中悠樹(のなか・ゆうき)1977年(昭52)12月10日、兵庫県尼崎市生まれ。高卒後にボクシングを始め、99年プロデビュー。08、14年に日本スーパーウエルター級王座、09年に東洋太平洋同級王座を獲得。昨年4月にIBF同級2位決定戦で判定負け。通算33勝(10KO)10敗3分け。182センチ。左ボクサーファイター。