前WBA世界スーパーバンタム級王者で、同フェザー級10位の久保隼(29=真正)が5月26日に中国・撫州市でWBA世界フェザー級王者徐燦(シュ・チャン、25=中国)に挑戦することが決まり、19日、神戸市内で会見した。久保は昨秋に右目を負傷し、3月8日に手術した。引退危機を乗り越えて、世界2階級制覇に挑む。前WBOフライ級王者木村翔がWBAライトフライ級王者カルロス・カニサレスに挑む試合と合わせ、ダブル世界戦となる。

久保は17年9月にダニエル・ローマンに9回TKO負けを喫し、スーパーバンタムの王座を陥落。減量苦の軽減を狙い、昨年4月に階級をフェザーに上げて再起したが、同10月のスパーリングで右目を負傷した。診断は眼筋を痛めた滑車神経マヒ。「ものが上下に2重に見える状態」。最もショックだったのは、水差しからコップに注ごうとして机にこぼしたこと。「本音を言えば(引退を)考えました」-。

ジムの後輩、元WBO世界ミニマム級王者山中竜也さん(24)が同7月の防衛戦で硬膜下血腫になり、引退していた。最も心の通い合った“戦友”の“悲劇”を目の当たりにしていた。手術直前にはジムの山下正人会長に「目が見えへんようになっても構わないから(世界戦を)やらせてください」と訴えた。ところが、そんな怖さ、不安は手術から一夜明けて一気に晴れた。包帯を取ると「ものがちゃんと1つに見えた。あれはほんまにうれしかった」と安堵(あんど)した。

世界挑戦に山中さんも喜んでくれた。「珍しく“絶対”という言葉を使って“勝ってください”と言われました」。場所は完全アウェーの中国だが「どこでも一緒です」と気にしない。「チャンスをいただいた感謝の気持ち。応援してくださる皆さんのためにも、自分のためにも。竜也の分までと言えば何ですが、頑張ります」。また戦える、世界に挑める喜びを胸に、久保はリングに立つ。