世界最速3階級覇者のWBO世界フライ級王者田中恒成(24=畑中)が2度目の防衛に成功した。

同級1位ジョナサン・ゴンサレスにポイントでリードされる中、7回に3度のダウンを奪って2分49秒、逆転TKO勝ちを決めた。畑中清詞会長(52)は年内のV3戦で同級の卒業を明言。来春にも世界4階級覇者のWBOスーパーフライ級王者井岡一翔をターゲットに、日本勢2人目の4階級制覇を狙うプランを明かした。

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左ボディーで体をくの字に折り曲げたゴンサレスの腹に、田中が右アッパーを3発ねじ込み、マットに沈めた。7回2分49秒。レフェリーが試合を止め、3戦ぶりのTKO勝ちが決まった。この回は怒濤(どとう)の攻め。右ボディーで1分23秒と1分55秒に、そして最後を含めて計3度のダウン。3回も1度倒しており、計4度のダウンを奪って会場を沸かせた。

勝利者インタビューで「母校にあやかりました~」と喜んだ。今夏の甲子園で7回にビッグイニングを連発し、4強入りした中京学院大中京を引き合いに出し、笑いを誘ったが、本音も出た。「(最後は)倒すつもりだった。KOできて良かった。内容は最悪ですけど」。

序盤から手数を許してポイントを奪われた。4回にはダメージこそなかったが、バランスを崩してダウンも喫した。「体が思うように動かなくて、リズムも悪かった」。6回までのジャッジの採点は0-2でリードを許していた。

苦戦の予感はあった。フライ級王座を奪った木村戦、田口とのV1戦が「もうフライ級に興味のある相手はいない」というほどの激闘。今回は指名試合でも“勝って当然”だった。「相手が強い時はいい試合ができるけど。課題ですね」と反省が口を突いた。

アマチュアで東京五輪を狙う兄亮明(25)が、サウスポー対策でスパーリングの相手をしてくれた。勝利のリングでは、7月8日に他界した祖父水野高尋さん(享年78)の遺影を掲げた。周囲の思い、期待を力に変えた。反省はしても前向きだ。「今日がうまくいかなかっただけ。全然負けるとは思わなかったし、これぐらいの勝ち方ができた。力がついたのかなと思う」。世界4階級、5階級制覇へ。立ち止まっている暇はない。【加藤裕一】

▽元WBC世界バンタム級王者山中慎介氏 7回のボディーはさすがだった。スピードを生かしたくても生かせない、本人は納得できない試合かもしれない。