プロボクシングWBA世界バンタム級2位の堤聖也(28=角海老宝石)が、13年越しのリベンジへ“一瞬の勝機”にかける。アマチュア時代に敗れた同世代の同級王者・井上拓真(28=大橋)への挑戦(13日、東京・有明アリーナ)に向けた練習を4日、都内で公開。攻防兼備の王者に対して「瞬間を突く」攻略法を明かした。2日間連続興行の試合順も発表され、井上-堤の因縁対決が初日のメインイベントに決まった。
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王者はスピードと高い防御技術に定評がある。牙城攻略は簡単ではないが、堤の頭の中には突破口があった。「全体的な時間では拓真選手が上回るでしょう。でもボクシングは瞬間、瞬間で展開が動く。その瞬間に気持ちやパワーで自分が上回ったら展開はズレる。そこを突いて崩すと僕の展開になる」。落ち着いた口調に自信がにじんでいた。
この12年間、堤にとって井上は「ずっと胸に残っているしこり」のような存在だった。
九州学院高2年のインターハイ準決勝で判定負け。平成国際大でボクシングを続けたが「アマチュアで辞めるつもりだった」。それが黄金世代と言われる井上ら同じ95年世代がプロで王者になる姿を見て翻意。「自分がどこまでいけるかやりたくなった」。18年にプロデビューした。
戦績は無敗も順風ではなかった。5連勝後は2連続ドロー。その後、コロナ禍で1年8カ月も試合ができなかった。
昨年12月の日本バンタム級王座4度目の防衛戦では、挑戦者の穴口一輝選手が試合後に意識を失い、手術を受けた後に亡くなる悲劇も起きた。「穴口選手だけじゃなく、自分の試合で引退した選手への思いは常にある」と堤。
アマ時代の最高成績は大学1年時の国体準優勝で、3位が6度。優勝は1度もない。ボクシングを続けてきた原動力を「ずっと1番になっていない劣等感」と即答する。
悲願だった井上との再戦は“世界で1番”をかけた大舞台。「(リベンジの思いは)プロになるきっかけだった。でも今は澄んだ気持ちで、ただ井上拓真という強い選手と戦えるのがシンプルに楽しみ」。12年かけてたどりついたリベンジマッチは、堤にとって風雪のボクシング人生の集大成でもある。【首藤正徳】
○…堤の公開練習を視察した井上が所属する大橋ジムの大橋会長は「(堤には)人間力、目に見えない力強さを感じる。見づらい角度がくるフックは警戒するパンチ。魂と魂がぶつかり合ういい試合になる」と、挑戦者の気持ちの強さに警戒感を強めつつ好試合を予想した。「瞬間を突く」という挑戦者の戦略については「拓真はキャリアもあり、まったく気にしていない。反応も修正もできる」と意に介さなかった。

